彼の無邪気さが なぜかたまに、とてつもなく怖くなる 僕達二人だけでよかったのにね 「ふー。」 穏やかな風の中、俺は公園の芝生に身体を投げ出した。 「やっぱ一人でのんびりする時間って最高だな。」 くぅーと背伸びしながら、新鮮な空気を肺一杯に取り込む。 最近慌しくなった俺の日常にとって、一人の時間はとても久しぶりな気がする。 でも、この時間があまり長く続かない事を俺は知っている。 「瑛、みっーけっ。」 さよなら、俺の一人きりの時間。 「良太ろ・・・じゃ、なくてリュウタロス。」 突然、日光が遮断される。 そして変わりに俺の視界には、嬉しそうに笑う友人の姿・・・ 「うん、正解。」 をしているが、別の彼。 やれやれと身体を起こすと、まってましたとばかりに後ろから抱きしめられる。 「リュウタロス・・・離れろって。」 「やだ。」 「やだってお前な・・・。」 まるで駄々をこねる子どものように、リュウタロスは俺から離れないと主張する。 『リュ、リュウタロス、瑛、困ってるから。』 「そんな事ないよ、ねー。」 おい、その自信は一体どこから出てくるんだ。 そうツッコミそうになるのを辛うじて抑える。 ある日突然、デンライナーに乗る事になった俺。 最初は何もかも信じられない事ばかりだったが・・・今は正直諦めている。 未だに分からない事ばかりだけど、 唯一ハッキリしているのがリュウタロスに『懐かれている』と言うこと。 「瑛、僕のこと好きになってくれるよね?」 「嫌。」 「えー、いいじゃん。好きになってよ。」 「・・・良太郎、身体の調子は・・・。」 「瑛は今、僕と話してるんだよ。良太郎は関係ないでしょ。」 期待に満ちた目を直視できなくて、無理やり良太郎に話題を移そうとすると すかさず、リュウタロスが拗ねたような声をあげた。 「でもその身体の持ち主は良太郎だろ。」 「うっ、確かにそうだけど・・・。」 「それにそんなに好きって言わせたいなら、俺を操ればいいだろ。」 リュウタロスの能力ならこんなこと容易いハズだ。 「それじゃ、違うから駄目―。」 少しむくれてそっぽを向いたリュウタロス(でも身体は抱きしめたまま)に しょうがないなと身体を反転させて向き合う。 「はぁ・・・よしよし。ま、気長に頑張ってくれ。」 クシャクシャと頭を撫でるとリュウタロスは嬉しそうに目を細めた。 うん、たぶんこれがウラタロスの言う 『瑛はリュウタロスを甘やかせすぎなんだよね』 って奴なんだよな。 自分で自分の首を絞めていると自覚しながらも、俺はリュウタロスを拒みきれない。 それはきっとリュウタロスが無邪気すぎるから。 好きなものは好き。 欲しいものは欲しい。 そう、心のままに主張するリュウタロス。 その無邪気さが、たまにとてつもなく怖い。 「ねー、瑛。」 「ん、何?」 「僕達二人だけでよかったのにね。」 「嫌。」 「えー、なんで!?」 これ以上、リュウタロスのペースに巻き込まれたら 思わずあの質問に首を縦に振ってしまいそうだから。 「秘密。」 「じゃあ、もう少しだけこうしててもいい?」 「デンライナーに帰っても、ずっとくっついてるくせに。」 「今はまた特別。」 「はいはい。」 ―僕達二人だけでよかったのにね― 勘弁してくれ、これ以上。 2007/5/10 |